相続が発生した場合、大切な方を亡くされ心身とも疲労している中で各種の手続きをする進める必要に迫られます。これは被相続人(お亡くなりになられた方)が現役世代であれば日々の生活を継続しながら手続きを並行させて行うことになり、時間的な制約、各種手続きの手間、平日の対応が難しいなど、現実的に手続きを遂行することが不可能なケースも少なくありません。また被相続人が高齢であっても各相続人が一同に会する機会もなく、代表相続人が全ての相続人を取り仕切って手続きを進めることは容易ではありません。また夫婦のみで生活をされていた方の一方が亡くなられた場合には、残された方がお一人で複雑な手続きを進めることも心労も含め容易ではないと言えます。
- 現役世代の方に相続が発生したが、日々の生活も継続しなければならない
- 高齢の親に相続が発生したが、各相続人が頻繁に集まることができない
- 一人残され、何をどうすれば、よいかわからない
相続開始から最初の3ヶ月以内に決断すべきこと
相続が発生し、各相続人が自らが相続人と知った日から3ヶ月以内に決断をしなければならないことがあります。それは①単純承認、②限定承認、③相続放棄のどれを選ぶかということです。このうち②限定承認と③相続放棄は裁判所へ申立てる必要があり、迅速に準備をする必要があります。また①単純承認においても、ある行動(例えば、被相続人の銀行預貯金を引き出し、使用すること)が法律上単純承認とみなされた場合においては、多額の借金が見つかった場合に相続放棄をすることができなくなるなど、慎重な判断が必要になります。
相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐことです。
全ての相続財産(プラスの財産もマイナスの財産も)を放棄することです。
※ 万が一相続開始から3ヶ月経過をした場合でも、必ずしも相続放棄ができないとは限りません。
項目 | プラスの財産 | マイナスの財産 | 備考 |
---|---|---|---|
単純承認 | 相続する | 相続する | 一定の行為は単純承認とみなされる、単純承認後は相続放棄はできない |
限定承認 | 相続する | プラスの財産の限度で相続する | 裁判所への申立てが必要、相続人全員の関与が必要 |
相続放棄 | 相続しない | 相続しない | 裁判所への申立てが必要、初めから相続人でなかったことになる |
各種名義変更・相続税申告まで(相続開始から10ヶ月以内にすべきこと)
相続が発生した場合にやらなければならない手続きは多岐に渡りますが、大きく期間で分けると下記のようになります。
- 相続開始から7日以内にすべきこと
- 相続開始から3ヶ月以内にすべきこと
- 相続開始から4ヶ月以内にすべきこと
- 相続開始から10ヶ月以内にすべきこと
では、順を追ってみていきます。
相続が発生した場合、まず最初に被相続人が亡くなったことを市町村へ知らせる必要があります。多くの場合、葬儀を取り仕切った葬儀社の担当者を通して火葬の手続きなどと一緒に書類が準備されます。
- 相続の開始(ご本人様の死亡)
- 死亡届を市町村へ提出
通夜や火葬などの一連の葬儀が執り行われた後、具体的な相続手続きを始めることになります。この相続開始から3ヶ月以内は主にその後の手続きの準備(相続人の確定や相続財産の把握)と被相続人が亡くなられたことにより受け取ることができる金銭(年金や保険金の受け取り)の請求が主になりますが、遺言書の有無の確認や、前述した相続放棄等の決断など、相続手続きの中でも最も忙しい時期になります。
- 葬儀費用等の領収書の整理・保管
- 遺言書の有無の確認
- 相続人確定の手続き
- 年金・保険などの請求手続き
- 相続財産(遺産と債務)の概要の把握
- 裁判所への相続放棄・限定承認の手続き
準確定申告という言葉は聞きなれない言葉ですが、被相続人の生前の収入の状況により必要になる手続きです。一例として、被相続人に事業所得や不動産所得があった場合など考えられます。
- 死亡した本人の準確定申告
相続開始から3~4ヶ月を経過し、相続人や相続財産が確定、その後、相続開始から10ヶ月以内の時期には、遺産分割協議を完了させ、各種の財産を各相続人へ分配する時期になります。具体的な手続きは国家資格者の関与が必要になる不動産の名義変更(相続登記)や、場合によっては相続税の申告などを行い、ここでの手続きを行うために準備を進めていくことが、いわゆる相続手続きと呼ばれるものになります。
- 相続財産(遺産と債務)の確定と評価
- 遺産分割協議及び協議書の作成
- 相続税の申告・納付
- 不動産や自動車の名義変更や預貯金の解約等の各種手続き
適切な相続手続きを行わないリスク
相続手続きは手間もかかり、通常であれば3~4ヶ月、相続税の申告がある場合においては1年近くの時間を要します。しかし、手続きを行わなければその後に様々なリスクを残すことになります。
- 新たな相続が発生し、相続関係が複雑化し遺産分割協議が事実上不可能になる可能性があります。
- 不動産の権利関係が複雑化し、処分ができなくなる可能性があります。
- 故人の借金等の債務を負わなければならなくなる可能性があります。
- 相続財産を勝手に処分することにより、他の相続人から遺留分県債請求を受ける可能性や、相続放棄等の手続きに支障を及ぼす可能性があります。
全ての相続手続きに専門家の関与が必要とは限りませんし、手続きに費やす時間が確保できるのであればご自身でできることも数多くあります。その際は、全体の流れの中で見落としている部分がないか、慎重に考慮すべき事柄を安易に決めてしまってはいないか、という点に注意する必要があります。
- 全体の流れの中で見落としている部分はないか
- 慎重に考慮すべき事柄を安易に決めてしまっていないか
専門家に相談するメリットのは、上記2点についてのわかりやすい説明を受けられ、重要事項に注意を促す点にあります。加えて具体的に依頼をされた場合においては、手間と時間、さらには心労の軽減になるのではないでしょうか。
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